Gravitational wave physics and astronomy: Genesis(重力波物理学・天文学:創世記)
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 アメリカのLIGOによる重力波直接検出の第一報は2016年2月にもたらされました。重力波は、アインシュタインが提唱した一般相対論によってその存在が予言され、その直接検出が待たれていました。一般相対論という重力の理論は、時間と空間が曲がっていると考え、その曲がった時空上を物体が直進することによって、あたかも重力を受けて運動したかのように見えるという発想に基づいた理論です。この時空の曲がりが波となって伝播するものが重力波です。重力波の直接観測がはじまった今、この科学的大発見のチャンスをつかむために、重力波データ解析、対応天体観測、理論的研究、それぞれの強みを活かし密接で高域な連携を実現することで、重要な成果を挙げるとともに、将来を担う若手研究者の育成をおこない、この新しい学問の創世をリードすることが本領域の目指すものです。
 実際、重力波という新たなプローブを獲得したことで様々なブレークスルーがもたらされつつあります。LIGOによる初の重力波直接検出は、我々の宇宙に太陽質量の30倍のブラックホールからなる連星が多数存在するらしいという驚くべき発見をもたらし、その起源が大きな謎となっています。加えて、重力理論の検証を重力波の実データを使って実行することも可能になります。また、未だ発見の報告はされていませんが、中性子星を含む連星の合体からの重力波も、近い将来に見つかると予測されています。対応天体を電磁波で観測することで、宇宙最大の爆発現象であるガンマ線バーストの正体や、宇宙における金や白金の起源を解き明かすことができると期待されます。超新星爆発も主要な重力波源の候補ですが、ひとたび、近傍でおこれば、その爆発メカニズムの理解が急速に進むと考えられます。
 日本には重力波研究を推進する上で、3つのアドバンテージがあるといえます。
 第一は日本の重力波検出装置であるKAGRAの開発が進んでいるということです。日本には独自の重力波データ解析チームが組織されており、柔軟性の高い独自の解析ライブラリの構築が進められています。また、2019年を目処に独自の重力波データ取得が期待されます。加えて、LIGO/Virgoのデータを研究に利用することも可能になっています。
 第二に重力波天体のフォローアップ体制ですが、重力波の到来方向にすばやく望遠鏡を向けて、突発天体を探す組織的な観測をおこなう体制ができています。特に、すばる望遠鏡/Hyper SupremeCAMはその高感度、高視野で世界的にも特筆すべき観測手段です。また、超新星爆発の際に世界最高のニュートリノに対する感度をもつsuper KAMIOKANDEと重力波による同時観測がもたらすインパクトは計り知れません。また、ショートガンマ線バーストのような突発天体に対するX線やガンマ線による観測の準備もできています。
 第三に日本における重力波の理論研究には長い歴史があるという点が上げられます。一般相対論と重力の国際ワークショップは毎年開かれてきました。また、「京」コンピュータなどが利用可能な数値シミュレーションの分野においては、世界に先駆けて定式化を完成させた数値相対論や、3次元の超新星爆発のシミュレーションなど、日本発の重要な研究成果が続々と上がっています。
 
 現在、世界中の研究者がこの科学的大発見のチャンスをつかもうとしのぎを削っています。この競争の中で優位に立つためには、前述の3つの優位性を結集して、密接な研究ネットワークを築くことが必要と考えます。世界的にも類をみない大規模な重力波研究ネットワークの構築により、世界的な研究成果を挙げることができると同時に、広がり行く重力波物理学、天文学の将来を担う人材育成も可能になります。計画研究には、有力な研究者を結集させました。強重力の理論検証、ブラックホール連星起源の解明、宇宙最大の爆発現象正体の解明、金・白金の起源解明、超新星爆発機構の解明といったサイエンスターゲットに総力を挙げて取り組みます。

 領域推進のビジョンとして、相乗効果、国際競争力、人材の育成の3つを掲げました。
 相乗効果はこれまでに強調してきた通りですが、重力波検出とフォローアップ観測が進む状況で改めてこれまでの研究を捉えなおすことで新たな視点が生まれてきます。ブラックホール連星形成進化の研究などは良い例です。異なる分野間の連携を進める手段として、年3回のワークショップに加えて、領域国際シンポを毎年ひらき、最新の情報を領域全体で共有します。また、重力波源毎の班体制を構築して密接な議論を実現していきます。
 2点目の国際競争力ですが、まずは構成員が意識を高く持つ必要があります。国際的な競争で勝てる研究なのかを総括班で議論し批判しあいます。国際活動支援班では国際会議へ派遣する人材を選定し、派遣された人には全体会議での報告を義務付けます。
 3点目の人材育成ですが、重力波データ解析に限らずデータ解析がこの分野の発展において非常に重要な役割を果たします。そのような傾向は今後も加速されることでしょう。また、理論的な研究を理解して適切な解析をおこないサイエンスを引き出すということも要求されます。本領域を推進することはこのような能力に長けた人材を育成することに繋がり、領域終了後にも残る価値となると考えます。
 
 この重力波物理学・天文学の創生に際し、本領域が重要な貢献を残したと後世に伝えられるような成果を残すことができるように、力を合わせて面白い研究成果を着実に積み上げていきましょう。