Gravitational wave physics and astronomy: Genesis(重力波物理学・天文学:創世記)
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キックオフ会議レポート

2017年9月22日〜23日、新学術分野である「重力波物理学・天文学:創世記」キックオフ会議が京都大学総合研究棟4号館の第3講義室にて開催されました。 テレビ会議システムを利用した遠隔参加者に加え、64名が参加しました。  今回のキックオフミーティングでは、この新学術領域の始まりとして各計画研究の各々の分野における国際的な研究の進捗状況を確認しました。次に、各計画研究班は、研究がどのようにプロジェクトとして体系化され、何を明確にすべきかについて発表し、2年後の中間評価までにどの程度到達できるかについて深く議論しました。
 
(A01)「重力波データ解析による重力理論の検証」については、これまでの観測と一致するような、重力に関するいくつかの修正が想定されます。これらの考えられる修正について、重力波波形予測に関する詳細な研究がすでに行われていますが、スクリーニングメカニズムを実現するためには、連星進化に対する非線形作用の影響を考慮する必要があります。この種の予測には多くの困難があり、このような問題は、A02グループと協力して取り組まなければなりません。インスパイラルバイナリからの重力波波形に関する理論的予測が信頼性の高いモデルのカテゴリはいくつかあります。このようなモデルでは、A01グループによる重力波データ解析コードの体系的な開発が見込まれます。また別の側面としては、連星合体の結果としてのブラックホール(BH)形成後の固有振動が興味深い研究対象となっています。固有振動の周波数および減衰率を抽出するための様々な手法が説明され、次いでそれらの方法の効率のよさについて比較することが提案されました。
 
(A02)「重力波物理学・天文学における重力理論研究の新展開」については、短距離および長距離の重力理論を進展させることが目的です。実験では、約0.01mmよりも短い距離では重力がどのようにふるまうのかはわかりません。理論的観点からも、重力を量子論として一貫して扱うためには、一般相対性理論を何らかの方法で修正する必要があると考えられています。この意味では、短距離での重力は理論物理学の最先端の一つです。また宇宙論スケールの重力もこのような距離での重力は直接調べられていないため、もう一つの最先端領域と考えられています。したがって、「一般相対性理論で暗黒エネルギーや暗黒物質を導入するのではなく、長距離や時間スケールで一般相対性理論を変更できるか」と問いかけるのは自然なことです。A02グループは、重力波物理学・天文学の観点から、宇宙論や理論物理学における未解決の問題にアプローチする様々な可能性を模索しています。このキックオフ会議では、効果的な場の理論のアプローチ、重力理論のテスト手法、確率的重力波の検出の展望に焦点を当てました。
 
(A03)「ブラックホール連星形成過程の理論的研究」は、宇宙の歴史を通じてブラックホール連星/中性子星(NS)の連星合体頻度と性質を理論計算によって予測し、この理論的予測と重力波観測とを比較することによって初期の星形成等を解明することが目的です。私たちはすでに、連星形成の前段階、主系列星前の進化など、進化の一部については数値シミュレーションを行っています。しかしながら、重力波観測の結果を予測するためには、原始宇宙崩壊から始まり、重力波放出による連星合体までの進化段階全体を精巧な方法で網羅しなければなりません。そのためには恒星進化と超新星に関してB03及び C01グループとの連携は非常に有用です。また、私たちは重力波イベントから星の第一世代の特徴的性質をとらえるためにどのような情報や予測が必要かについてA01グループと話し合いを持ちました。
 
(B01)、「中性子星を含む連星,パルサー,マグネターからの重力波による宇宙物理学の研究」については、重力波検出器のデータ分析者、数値相対論の理論研究者および中性子星の天体物理学研究者が参画し、中性子星が重力波源となる重力波の検出とその理解に努めています。
ブラックホール連星による重力波が最初に検出されましたが、最も有力な重力波源の1つである中性子星連星とブラックホール-中性子星合体からの重力波を検出すること、および潮汐相互作用と合体後の超大質量中性子星の理解を通じて、中性子星の物理的性質を制限することを目標としています。他の研究目標としては、短ガンマ線バーストやキロノヴァ・マクロノヴァといった中性子星-中性子星と中性子星-ブラックホール連星の電磁波対応天体を予測することがあげられます。田越氏は、B01グループの概要並びにKAGRAや数値的相対性理論グループが作成した詳細な数値波形を取り入れた他の重力波検出器のデータ解析の状況および研究計画について発表し、木内氏は、BNSの数値相対論シミュレーションの状況と計画を発表しました。使用される大規模シミュレーションが計画され、これまでのモデルを上回る精度を持つ詳細な波形モデルを構築することが期待されています。小嶌氏は、磁力線からの重力波放出の理論的解釈を提示し、重力波検出が容易ではなくとも重力波の強度の上限を更に厳しくすることが内部を理解するのに有用であると指摘しました。伊藤氏は、パルサーから重力波を検出する見通しとデータ解析の計画を発表しました。
また、連星中性子星からの重力波を検出する見通しについても議論しました。
 
(B02)「高エネルギー観測で探る重力波天体」は、X線およびガンマ線ミッション(MAXI、CALET、Swift、Fermi)の観測者および理論研究者で構成されています。本計画研究の現状と展望は以下のとおりです。これまでの8年間にわたるMAXIで検出されたX線突発体の概要を紹介しました。広範囲の誤差領域からの重力波事象の対応EMへの迅速なアラートを提供するためにMAXIアラートシステムを強化する計画が説明されました。続いて、重力波観測実行中の重力波事象の電磁的対応体、SwiftおよびCALETデータを用いた重力波160104、およびフェルミデータを用いた高エネルギーガンマ線放射について説明がありました。 重力波関連の観点からGRBの性質を明らかにするための体系的な解析が計画されています。また、ブラックホール形成後の天体からのX線新星や中性子星連星合体からのオフアクシスジェットといった、重力波源からの高エネルギー放出の考えられ得るメカニズムについて、また今後の観測の見通しについて議論しました。中性子星合体による反復および非反復短電波バーストを説明する統一モデルを提示し、重力波およびEM対応体によって位置が特定された中性子星連星合体の1〜10年後の反復短電波バーストの出現を含むいくつかの予測がなされました。
 
(B03)の目標は、1)重力波事象の光赤外線対応体の特定と観測、2)最高水準の数値シミュレーションを用いた中性子星合体における核統合の理解、3)宇宙における重い元素の起源の解明があげられます。中性子星合体は、膨張速度が亜光速に達する高速物質を放出すると考えられています。この放出物質中のr-過程で合成された核子の放射性崩壊は、約10日間続く光学的/近赤外波長帯域付近でピークを有する電磁放射を生成します。重力波事象の光学的/近赤外線フォローアップ観測は、宇宙におけるr-過程核子合成の現場についての長年の謎を解明することを可能にするとされています。
B03グループはまた、放出物質をモデル化するために数値相対性理論計算と核合成理論とを組み合わせることによって、中性子星合体の放出物質の総量、元素存在量の実際的モデルを構築することを計画しています。これらのモデルを使用して、放出物質内の幅射輸送が解明され、中性子星合体による光/赤外線放射についてのより確かな予測および理解につながります。既存の重力波フォローアップネットワークJ-GEMを使用して光/近赤外線の迅速なフォローアップ観測も行う予定です。ガンマ線バーストとしてのX線からガンマ線への高エネルギー放射は、中性子星合体の光学/赤外光の前に放出されると予測されるため、B02グループとの連携は、重力波事象の電磁波対応体を特定するためだけではなく、短ガンマ線バーストの性質を明らかにするためにも不可欠です。また、電磁波放射の性質は中性子星の平衡状態と密接に関連しているため、B01グループとの連携も非常に効果的です。
 
(C01)は、「重力波による超新星メカニズムの探索」に焦点を当てています。このチームは、超新星理論と数値モデル化の専門家および重力波検出と核崩壊超新星(CCSNs)事象に関するデータ解析の専門家で構成されています。このワークショップでは、C01は、典型的な親星(15倍の太陽質量)3次元一般相対論シミュレーションからの重力波放出の分析結果を発表し、重力波シグナルが爆発の誘因の1つである超新星核内の衝撃不安定性(SASI)の決定的要因である可能性を指摘しました。さらに、SASIによって生成される重力波の円偏光に関する暫定的な結果を提示しました。SASIの計測を可能にする円偏光の検出可能性についての研究は早急に着手されるべきです。C01と他の計画研究班(A01およびC02)との共同作業は既に開始されており、マルチメッセンジャーの観点から核崩壊超新星物理の理解を大きく進歩させることになります。
 
(C02)「ニュートリノを用いた超新星メカニズムの研究」については、超新星ニュートリノに関するシミュレーションおよびその検出分野における実験・理論の研究者が参画し、星がどのように爆発するのか、また、これらの爆発の結果、重力波を生じさせる中性子星やブラックホールの連星がどのように発生するかについて、より深い理解を得ようとしております。世界をリードする超新星ニュートリノ検出器であるスーパーカミオカンデは、水溶性ガドリニウム塩追加による大きなアップグレードが予定されています。このアップグレードはC02グループの実験メンバーによって考案、実施されることになっていますが、これにより、天体形成以来のあらゆる核崩壊超新星爆発によって放出されたニュートリノである超新星起源の背景ニュートリノの世界初検出が可能になるはずです。これらの爆発から期待されるニュートリノの平均温度と、光学的には爆発しない場合の割合に関する知見は、C01グループとの緊密な協力を得ながらC02グループの理論メンバーによって行われている爆発のモデル化(6D Boltzmannトランスポートを使用)を更に進化させることにつながります。この世界最先端のシミュレーションは、次の段階としては、銀河内で起こる超新星爆発の観測に備えて活用もされます。
 
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